認知心理学の用語に、「選択的注意」というものがあります。

これは全人類が持ち合わせている高次な機能であり、日常生活で頻繁に働いています。

そして選択的注意は、ビジネスやマーケティングにも深く関わっているののです。

本記事では選択的注意について、詳しく解説します。

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選択的注意とは

選択的注意とは、一言で言えば「さまざまな情報が飛び交っている条件下において、無意識的に重要だと判断した情報だけに、注意を向ける人間の認知特性」というような意味です。

これは一般的には「カクテルパーティー効果」として知られています。

たとえばパーティーにおいて多くの人たちが、さまざまな談笑や会話をしていたとしましょう。

ある場所では景気動向について、またあるグループは不動産取引の話をしているて、それが音声として聴覚に届くという状況です。

しかしこの環境下において、自分が強い興味関心を持っている話が聞こえてきたとしましょう。

すると、他にも談笑があるのにもかかわらず、その話にだけは注意できて、内容を理解できてしまいます。

その人の話し声が大きくなったわけではないし、位置関係に動きもありません。

これは認知心理学ではカクテルパーティー効果と呼ばれ、選択的注意の代表事例として知られています。

なぜ、選択的注意が起こるのか?

選択的注意が起こるのは、「生きるためだから」というところに集約されます。

人間が生きるためには、生存に必要な情報を優先的に取得する必要があります。

 

原始時代において私たち人間は、いつ他の哺乳類に襲われるかわからない環境で生きていました。

となると、「虎が出たぞ!」というような声は、「木の実が成っている」という日常的な報告よりも情報として優先されるべきです。

すなわち情報に優先順位をつけて、「生存に関わる情報に注意するだけではなく、思考するよりも前に反応する」という能力を獲得したと考えられています。

 

つまり原始時代において経験から学習したことが、現代でも変化せず受け継がれている、というわけです。

選択的注意と認知に関する研究

選択的注意、およびそれに付随する認知は、多くの心理学者によって研究されてきました。

 

イギリスの認知心理学者だったチェリーは、これについて興味深い研究結果を残しています。

チェリーは、被験者に対して「一方の耳だけに意識させて両耳から言葉を聞かせる」という実験を行いました。

 

被験者は、意識が向けられていた耳に聞こえた言葉は復唱できました。

しかしもう一方の耳、つまり意識は分離されているが、聞こえているはずの言葉は、まったく復唱できませんでした。

 

つまり注意が払われていなかった情報を、人間は早期に放棄すると分かったのです。

これを「早期選択説」と呼びます。

 

また、心理学者ブロードベントは、被験者に対して「数字を聞かせて、それを再生できるか?」という実験を行います。

この結果からは、「意識することで、左右の耳から入ってくる特定の数字だけを認知し、優先して情報処理選択している」ということがわかりました。

 

トリーズマンは、「注意していなかった情報は、完全に忘れてしまうわけではない」ということを判明させています。

ただし注意していた場合と比較して明らかに情報は減衰され、それは「減衰モデル」と呼ばれています。

 

ラヴィは、「負荷理論」というものを見出しました。

人間には、「ボトムアップ処理」と「トップダウン処理」という機能が備わっています。

前者は「情報をひとつずつ集めて、構成すること」、後者は「経験や記憶から、それが何か判断すること」を意味します。

そしてふたつの処理の挙動から、「情報が多い=負荷が高いと選択的注意はより強く働き、負荷が低ければそうではない傾向がある」ということを突き止めました。

つまり「情報量が多いと、情報を処理しきれない」という現象が起こるというわけです。

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選択的注意と、Webマーケティングとの関わり

選択的注意は、Webマーケティングにも深く関わっています。

なぜなら選択的注意は、Webメディアにおいて、毎回のように働いているからです。

 

たとえば「ブログの記事を読む」というケースについて考えてみましょう。

ブログの記事は、最初から最後まで通して読む、ということはほとんどありません。

基本的には、「自分が知りたいと思っている特定の記述」にのみを対象として注目します。

たとえば「あるプロジェクトがうまくいかなくて困っている」というニーズを持っているユーザーあれば、その解決策や成功モデル、具体例などの説明を切り取って読むという行動を取ります。

というようにWebマーケティングには、選択的注意が深く関わっているというわけです。

選択的注意を活用する

Webマーケティングに選択的注意が関わっていると分かっていれば、それを活用することが可能です。

要するに読んでもらいたい部分に対して選択的注意をさせれば、より効果的に態度変容や需要喚起が起こせるというわけです。

そしてその方法や戦略としては、さまざまなものが考えられるでしょう。

 

たとえば、「このキーワードで流入してきた消費者は、これを求めているから、この部分に選択的注意をはたらかせるのではないか?」というように、ユーザー心理を推測できます。

ある部分が選択的注意だった場合、そこにCVへ繋がるような、強力なコンテンツを投下する、というような戦略が見えてくるというわけです。

選択的注意を意図的に起こすには、以下のような方法が考えられます。

  • 目に入りやすい場所へリンクを掲載する
  • カテゴリー分けを用いて、欲しい情報がすぐに取得できるようにする
  • ページ中に見出しへのリンクを設置する
  • ポップアップで情報を表示して、クリックを誘発させる
  • オンマウスで情報を表示して、クリックを誘発させる
  • クリック先で何が表示されるのか、説明文を表示する
  • ホームページのデザインをシンプルにして、文字へ着目するように誘導する
  • 目に入りやすい場所には、直接的な広告を置かない

 

他にも視覚的刺激で選択的注意を引き起こす方法は、数多くあります。

というように選択的注意を応用できれば、より多くの成果を獲得できるようになるはずです。

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